トピック「正社員」について


正社員が無くなった方が良い、これだけの理由 - 非天マザー by B-CHAN

 

このような人気エントリがありまして、ブログ主は正社員はないほうがよろしいとお考えのようです。私もそこまで深く考えたことはありませんが、賛成者の論がこの程度なのかと思うとがっかりしております。

一言で申しあげると経営者とくらべて正社員は安定していて、時には会社の成長を妨げたり、不要な社員が足をひっぱるから会社の力が落ちている。エントリ内ではそこまでは言及されてませんが、会社の力が戻ったほうが日本は良くなるという論です。

給料を払う主体は会社ですから、もちろん会社に元気を取り戻して欲しいというのはあります。

その分、社員や社会に還元されれば日本もまた上向きになるでしょう。

だた、このエントリでは「正社員を手厚く保護する」状態が問題で、そうすることで会社のコストやリスクが下がると論じておりますが、そのような一方的なメリットだけしか想像できないのか疑問なのです。

雇用が流動化するということは優秀な社員も1年後の契約延長があるかわからないわけですから、より高い報酬を求めてくる可能性もぐんと増えるわけです。

いままで30万で働いてた人が100万円分の給料をもらう価値がある場合、いままでは長期雇用を担保に抑えられてた人件費を要求してくるかもしれません。

わかりやすい例をいえばスポーツ選手の契約がそうです。いい成績を残していて球団の提示額と折り合いが付かない場合は状況によってはより高い評価、報酬を払う別チームに移籍します。

NPBは球団の保有権とか、すこし日本の正社員的な側面もありますし、FA権をとる年月も相当かかりますので、そこまで移籍は多くありませんが、MLBは盛んで、FA選手が高額の契約でバンバン移籍します。

正社員を無くすということはこういうことが起きる可能性もあるのはないでしょうか。

その場合、人件費の抑制どころか高騰や長期的な人材確保も困難になる可能性もあるのです。これは会社・経営者にとってはデメリットになるのではないでしょうか。

それでも、優秀な人間が高額の報酬を得ることは働く側にとってメリットでもあるんだから、正社員はなくしたほうが良いという考えもあるでしょう。

正社員という制度を無くすかどうかというより、正社員であっても、解雇を自由にできるようにすれば、こうやってホントに努力が報われる人が救われ、サボる人が保護されないようになるんですよ。

これも一見非常に平等で素晴らしいように見えますが、本当にそうでしょうか。

また、野球のたとえで申し訳ないですが、優秀な選手の年俸の高騰化と安定した戦力確保を得るために「複数年契約」というのがあります。

あなたは優秀だから特別に3年、5年と契約する。だから総額を少し落としてくれというボリュームディスカウントのようなものです。

ですが、MLBでは現在「死刑囚」と揶揄されるほどの高額の長期契約だけども、期待以下の働きしかしない選手も大量に生み出されています。

(ヤンキースが最近イマイチな理由はこれです)

 

会社でいえば25歳でとても優秀な社員がいて会社に5000万円の利益を毎年だしてくれたから、30歳まで1000万円の年俸で5年契約したところ、26歳から急に業界が不況になって毎年500万の利益しかできなくなったという状態です。

プラス4000万がマイナス500万。これは大きなリスクです。

長期契約は例えだとしても報酬を上げた途端に成果が下がるという可能性もあるのです。

「成果が出てないのに給料を払うのはおかしいじゃないか。そんなものは首にしたり、契約内容自体がおかしい」経営者側に立ちすぎるとそう考えるかもしれません。

ですが労働契約の不履行なんて、そんな道理は通らないですし、いままでは正社員というある意味会社と蜜月で一心同体的な関係もあったために労基に訴えなかっただけです。

会社側がドライな関係でくるのならば労働者側もドライになっていくはずで、不当な残業やら給料カットがあったらば、ガンガン労基に駆け込むかもしれません。

労働基準法と日本の会社は大幅に乖離していて、まともに労働基準法を遵守してるだけで偉い、素晴らしいと賞賛されるような異常な状態は正常になってゆくでしょう。

じゃあ完全インセンティブにすればよいとか、そういう意見もあると思います。

実際にほとんど成果給みたいな会社もありますが単純な営業職のようなシンプルに売上の○%がインセンティブとできる仕事以外は非常に複雑です。

成果主義が持て囃された時代もありましたが、複数の人間が係るプロジェクトで結果が数年先になるといったものは誰が正確に個人の成果がだせるんでしょうか。

事務職とか数字に出にくいものを納得感、公平感のある査定を毎年やるって、企業にとっても結構面倒くさい作業なんじゃないんでしょうか。

それでもって雇用の流動化、賛成者は解雇し易いメリットに目を向けてますが、解雇するということは、また新しい人材を増やさなければならないということでもあります。

今は就職事情は買い手市場で採用候補者なんてすぐ見つかると軽く考えてるのかもしれませんが、それは正社員という安定した立場だからこそそうなのであって、不安定な職業ならば状況はガラッと変化します。そして採用活動って求人広告も含めコストがかかるという点をお忘れなのではないでしょうか。

ブラック企業ならばそもそも法令遵守してませんし、もともと社員は使い捨て的なところもありますから、正社員がなくなろうと何も変わらないでしょう。

雇用を担保に多少の理不尽やサービス残業を強いてきた会社が一気に淘汰される可能性もあります。あえて対立関係で書きますが、経営者がダメ社員に苦しめられてる場合もあれば、ダメ経営者が社員に甘えてる部分だっていっぱいあるのです。

正社員不要論の怪しさは現在のギリギリバランスで成り立っている社会を崩壊させることのリスクがあまりにも楽観的すぎるところにあると感じました。